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No.15 2001年
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中国人民解放軍家庭訪問記
梅若靖記・恵子 去る4月15日の日曜日快晴、朝より我が家では散らかっている部屋のスペース作りにあちらの物をこちらへ、というような片付けをしておりました。お昼には、中国の人民解放軍の方を通訳の方を含めて5名お招きすることになっていたからです。 なぜ我が家へ?という疑問にお答えいたします。きっかけは、ほんの些細なことからでした。よく食事に行くお店で、お知り合いになった方とたまたまお会いしたときに、現在ご尽力されている中国との相互理解のために、笹川日中友好基金の民間交流の事業で、このたび佐官級の方を日本に招き、交流を図る中に家庭訪問を計画しているとのこと。しかしなかなか引き受けてがないとのことでした。日程を伺うと4月の第3日曜日。いつもでしたら梅若会の定式能にあたるのですが、今年は4月に別会があるために協力できることになりました。日頃私たちの中に、国際交流とは自分たちが出来ることを出来る範囲で気楽に出来ることをすればいいのではないかという理念みたいなものがありました。国や大きな団体でしか出来ないこともありますが、個人しか出来ないこともあるのではないか。機会があればお役に立ちたいと思っていたので、お力になりたい由のお話を致しました。以上のような経緯から、我が家に中国の方がやってくることになりました。 いざ、お招きするにあたり、特別なことをするのはとても出来ない。前日は梅靖会(お弟子さんの発表会)で、準備するにも時間があまりない。普通の生活をお見せしよう。という決断にいたりました。 次に少し頭を悩ませたのが、お食事のことです。これも手のかかることやあまり料理が得意でない私にとって、特別なメニューも作れません。いつものとおりです。そこでメニューというほどのことはないのですが、筑前煮、味噌豚(ゆでた豚肉に味噌にニンニクのすりおろしを混ぜたのを塗ったもの)、我が家の冷奴(ごま油と葱と胡麻に塩)、油揚げにスライス玉ねぎを入れて焼いたもの、ふきとがんもどきの煮物、春なので豆ご飯、かきたま汁という、いかにも庶民的なものとなりました。 当日お見え下さったかたがたは、上級大佐や中佐の方々で解放軍報記者の方や、書家として著名な方もおられました。 せっかく我が家にいらしていただくので、テープにて羽衣の仕舞を舞った後に、装束や面も見ていただくことにしました。若女と般若の面をお見せしたところ、中国にも仮面はあるが、もう少し大きいそうです。しかし漆を使う技術などは同じなので、同じ文化を持っていることを感じると言っておられました。また梅若家に中国から伝わったとされる唐織をお見せしたところ、図柄が中国に伝わる昔話にでてくる日本の「七福神」ならぬ、「八賢人」の柄だそうで中国の方が見るとすぐわかる図案だそうです。そのようなことは初めて知ることとなりました。現在中国には、このようなものが既に残っていないので、日本で大事に中国の技術を残して下さったことは、大変喜ばしいことだというお話も出ました。解放軍報記者の方が写真を撮られて、逆取材も受けることになりました。 その後食事となり、いろいろな話を致しました。お酒は、最近は主にビールを召し上がっているそうです。日本でいう紹興酒は、あまり召し上がらないそうです。白酒(ウォッカのような蒸留酒とおもわれますが)というお酒を召し上がるそうです。そこは乾杯の文化を持ったお国(本当は杯を空けなくてはいけません)。皆さん宴会の席では、苦労しているそうです。 食事の最後に少し苦い思いをしていただこうと思い、和菓子と抹茶を召し上がっていただきました。通訳の干展氏の訳によりますと、この程度のにがみは楽勝だそうです。 お話をしている中に、中国と日本とは、過去に悲しい事件があったけれども、これからは仲良くしていかなくてはいけないと思う由お伝えしました。仲良くなればなるほど、喧嘩もするかもしれません。でも喧嘩をするから真の友情が出来るのであるから、おおいに喧嘩もしましょう。でも、その時は軍艦だけは持ってこないでくださいね。とお願いしました。その話をすると皆さん笑っておられました。思いがけずにこのような機会に恵まれ、有意義な一日を過ごすことができました。私たちに出来る国際交流には、これからも積極的に携わっていきたいと、ますます思うようになりました。このごろ教科書問題などで、感情がずれてしまっていますが、民間の交流こそが誤解を無くしていくものだと思っています。 無駄と文化 梅若靖記 昨今、選挙前だからでしょうか。急に政治家の先生やお役人さん達が、文化だ芸術だと言い出しましたが「本当に分かって言っているのか?」はなはだ疑問です。 この6月私は休みを取りフランスを旅しました。そこでふと思ったのですが、大いなる無駄がフランスの文化、芸術を支えているのだと。 パリ、セーヌ川両岸の町はほとんど昔のままの町並みを保っています。もし建て替える時は、外壁はそのままに残して内装のみを直すのです。すべて壊して建て替えた方が採算的にも機能的にも断然良いはずなのに。ガルニエの建てたオペラ座にも行きました。外装、内装にも隅々まですばらしい彫刻が施されています。天井にも絵が描かれています。オペラやバレエを見るのにこれらの彫刻や絵は何も必要ないと思われます。ルーブル美術館にも行きました。昔の建物の内装を直してそのまま使っているのです。その上入り口には、どう考えても意味のないガラスのピラミッドが作られているのです。ところがこれが妙に古い建物とマッチしているのです。 とある一日、足を伸ばしモンサンミッシェルに行きました。海に浮かぶ教会、何十年という歳月をかけて建てられたそうです。こんなところにここまで壮大な教会を建てる必要があったのでしょうか?経済至上主義から見て、よく考えてみるとオペラ、バレエ、音楽、絵画、彫刻も無駄なものですよね。フランスは無駄なものだらけです。だけれども私は何かフランスに行くとホッとするのです。 一度、今の日本に目を向けると誠に合理的で無駄な物が少ないところです。でもいつからそうなってしまったのでしょうか。昔は生活の中に和歌・能・文楽・茶道・香道・浮世絵・神社・仏閣・庭等、身近にあり、無駄なものだらけだった・・・。普通の家の中にも、床の間・欄間・襖絵、たくさん見事な無駄な細工がありました。いつのころからか経済至上主義になり、どんどんいわゆる無駄を捨てていってしまったのでしょうか。その結果いつしか文化のない、芸術の育たない国に成り下がってしまいました。物質的にはこんなに恵まれた国は世界を見てもそうないでしょう。でも中身が無くなってしまいました。経済原理に合わない物はいらないのでしょうか? そういう観点から言えば能なんていらない物の代表ですね。絶対に採算は合いません。大きな能楽堂でも観客はリミットで600人、それなのに200年〜300年、時にはもっと古い面をつけて、ふんだんに刺繍を施し、金をたっぷり使った衣装を着て、その上舞台は総檜造り、出演者も裏方を入れると30人は下らない。 ここいらでわれわれ日本人も人にとって何が本当に必要な物なのかを考えないといけないのではないでしょうか。そろそろ無駄こそが文化、芸術の源であることに気づかなくては。 ■後援会費等の改定のお知らせ 本年11月にて、後援会主催の公演能「招魂」が9回目を迎えます。諸物価高騰により、本年より正会員の年会費を\1,000値上げさせていただき、\7,500とさせていただきます。特別会員及び準会員の年会費は、そのままです。また、一般券は、\8,000とさせていただきます。(学生券は、据え置きます。)そのため、皆様方会員特別料金もそれぞれに変わります。 今後も充実した後援会の活動へと努力してまいりますので、何卒ご理解の程よろしくお願いいたします。 諸事情によりご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承の程よろしくお願いいたします。
「招魂」全席自由一般\8,000 学生\3,000 特別会員及び正会員は、従来通り会員券1枚はお届けいたします。 11月10日に開催される「第九回 招魂」の会員券は、次号の会報誌と共に10月初旬にお届け予定です。本年の年会費はそのときお納めください。 梅若会虫干しのおしらせ 梅若家の面及び装束を虫干しのために蔵から出して、一般公開いたします。 日時:8月15日(水) 於 梅若能楽学院会館 中野区東中野2‐6‐14 TEL:03-3363-7748 最寄駅:JR・大江戸線 東中野駅、大江戸線・丸の内線 中野坂上駅 下車 徒歩約7分 費用:1000円/人 梅若六郎による能面・装束などの解説が、11時と14時にございます。 久しぶりの虫干しの一般公開となります。この機会に日頃舞台で見ている装束や面などを間近に見る絶好の機会ですので、ご参加をお待ちいたして居ります。 予め後援会までお知らせいただければ幸いです。 |
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