質問 
回答
能楽師になる人はお能の家に生まれた人にしかなれないのですか?
どなたでも可能です。能の家の子でない人の方が多いかもしれません。現在能楽協会に加盟している能楽師の多くが能の家の子ではありません。現に小鼓方幸流の故幸祥光師は芸が見こまれて幸流の家元にまでなられ人間国宝にも認定されました。
謡曲や仕舞を習ってみたいと思うのですが、特別な人しか習うことはできないのでしょうか?
どなたでもできます。普通のお稽古事と一緒です。
お稽古のご案内をご覧ください。
お能を2回だけ観に行ったことがあります。1回目の時の舞台衣装は紋付袴姿でしたが、2度目の時の舞台ではなんと裃姿でした。どのように区別されているのですか?
本来、定例公演では、紋付袴ですが、特別な曲、特別公演(ガラ公演)のような時に裃を着用します。昔は侍烏帽子(さむらいえぼし)に直垂(したたれ)を着たようです
お能の世界は男社会のような印象を受けますが、女性は能楽師にはなれないのでしょうか?
能楽界全体からすると少ないですが、現在女性能楽師も居ります。
お面をかぶっている人といない人が、私には全く理解できないのですが、どうなっているのですか?
演能される物語のなかで、現世の人は面(おもて)を用いません。シテやツレは、亡霊であったり、人間でなかったり(何かの化身)することが多いのでほとんどの場合面をつけます。(例外もあります。)ワキ、間狂言は、物語の進行しているその時の人なので、面をつけません。但し、間狂言の中には、例外的に面をつけることがあります。
言葉(セリフ)が全く理解できませんでした。でも、視覚的な流麗さと渋さの中にも華やかな音楽を充分味わいました。なぜ、現代人にも理解できる日本語を(−日本語かどうかも分からなかった−)使わないのですか?あんなの、分かる日本人、今時いませんヨ。
能の成立時にも能の言葉は古語だったそうです。狂言で使われている言葉が当時の口語です。現代語で、演能を試みたりはしていますが、不思議なものでたいへんに音楽的に聞きにくく、耳ざわりです。もう一つ加えると歌舞伎より能の方が、外国人の方や子供には、かえって分かりやすいようです。言葉の意味も大事ですが、感性を鋭く全体を見ていただけると、良いと思うのですが・・・観る前にあらすじだけ、頭に入れておいて下さい。
能で舞台の後ろに座っている人はどんな役割をするのですか?
舞台の後ろに座っている人は後見といいます。能において後見は舞台に出る前にシテやツレの装束をつけることから始まり、舞台上で衣装の交換や作り物といわれる舞台装置を出したり、謡などのプロンプターの役目もします。また、シテが舞台上で倒れるなどの事故があった場合、後見が紋付のままで替わって演じます。
歌舞伎や文楽には、同じ物語がいくつかあるようですが、どのような関係なのでしょうか?
現在なら著作権の問題もあるのでしょうか、すべてのものは能から起源をとっています。ただし、同じ曲目でも歌舞伎などは能にない独自の部分も持っています。代表的なものとして、能の安宅が勧進帳・俊寛・安達原(黒塚)が黒塚等があります。
能面や装束はどのくらいの重量がありますか?
曲によって違いますが、女性の役の唐織もので5kg位で、だいたい3kg〜7kgと思います。(よく何10kgといわれたりしますが、そんなに重いものではありません。)
狂言役の足袋は白くありません。なぜですか?
役割が違うためです。
なぜあのように、長時間正座していられるのですか?しかも板の上で、何か秘訣があるのですか?
特に秘訣はありません。慣れるしかないことです。慣れるとかえって板の上の方が、座布団を敷いているより楽になります。
どうして絶対に笑いもしないし、微笑みもしないのですか?
能のシテは面をつけることが多いのですが、面をつけていないときも面をつけているように扱います。反って表情を表現するよりも体全体で表現した方が、伝わることが多いようです。。
本番前の舞台稽古や打合せなどはどのようにするのですか?
原則として本番の数日前に申合せ(もうしあわせ)というリハーサルを全員で行います。ただし、個人では数週間前から各々練習しています。常日頃の稽古が充分なら一回のリハーサルで充分です。能の場合、合わせ過ぎると互いの緊張がかけるため、面白くなくなってしまいます。また、リハーサルで決めたことが、そのまま当日の舞台でなされるとは限りません。その緊張感が能のよさでもあるのです。
番組の構成について意味を教えてください。
昔は能は五番だてで行われました。一番目は神の起源などの曲、神能・脇能で、二番目は源平の物語の修羅能、三番目には女性物・鬘物で天女や草花木の精の物語、四番目に雑物で、物狂いや殺生の話など、五番目は鬼畜ものです。代表的な曲として、一番目は高砂、二番目は八島、三番目は羽衣、四番目は隅田川、五番目は土蜘があります。また、一番目の前に翁の儀式が入り、曲と曲との間に、狂言が上演されました。現在のスピードある時代とはあわないために、二番や三番の上演体系になっています。
能楽師の方々は何才くらいから稽古をはじめるのですか?また、どの位の割合でするのですか?
能楽師の家に生まれた子は3〜4歳ではじめます。始めのころは、舞台で役が付いたときに集中して稽古をします。変声期の終わったころから本格的な稽古をします。謡の文句や節などすべて暗記しないといけないので、間に合わないのです。また、この頃から、シテ方は囃子の勉強を、囃子方は謡の勉強をします。楽屋内の仕事は、見ていて覚えます。
能には普通私たちが思っているような照明や音響効果はなぜないのですか?
能は昔午前中より屋外で行っていました。夜間の場合は薪や蝋燭の明かりの下で行っていました。それが現在のような能楽堂になりました。現在は電気の照明を使っています。すべてをフラットに照らし出すようになっています。影が出ないようにするにはかなり難しいそうです。また、音響効果のことですが、舞台は船底天井になっていて、自然に音響効果があります。また、囃子方の座っている後ろの天井も傾斜があって自然に音が前に行くようになっています。能楽堂は理にかなった音響の作りになっています。
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